5・6年生、3・4年生のスキー授業、それぞれスキー場は違いましたが、やはり、学年によって腕前ならぬ”足前”、経験値の違いを感じました。
スキーは、それほど体力を要するスポーツではなく、自分の体を支える体幹と歩行運動ができれば、何度か練習を積むことで筋力をあまり使わずに滑走することができるようになります。
北海道の学校体育にスキー授業が導入されているのは、こうしたスポーツの特性にあると考えます。
スキーを初めて経験する中で障壁となるのは、スピードに対する恐怖感です。
これを克服して初めて楽しい感覚を味わうことができます。
そのためには、
・動体視力を使う感覚に慣れること、
・用具の使い方と特性を理解すること、
・体の支えるポジションをとること、
・バランスをとること、
などについての練習が必要です。
これを段階的に行っていくわけですが、
体の小さい低学年と、体重が増す高学年では、アプローチが変わっていきます。
初めての場合や経験値が少ない場合は、これらの初歩的な動作をおぼえるために、
グループ別にして練習を行うことで、
一緒に練習する仲間がいることによる心理的安全性を確保し、
練習に向かう意欲を高めることができます。
心理的な不安が強い時には、指導者と一対一で練習するのも効果的です。
そういう細やかな配慮をしながら、スキー学習は運営され、
子どもたちは段階的な経験によって、滑る楽しさを味わっていくわけです。
それを支えてくださる外部指導者の方々や保護者ボランティアのサポートによって、
安全が守られつつ、楽しいスキー授業が運営できているということを実感しております。
特に、初めて経験の一年生には、手厚いサポートをいただいており、ボランティアの皆様の温かな励ましや関わりに心から感謝しております。
1月30日、ゲレンデは湿雪、深雪の状況で、スキー操作は難しいため、ゲレンデ整備を行いました。
スキーを履く集合・待機場所は、保護者ボランティアの方にスノーダンプを使って除雪していただきました。
1年生は3回目のスキー授業だったのですが、毎回、保護者の方々にサポートいただいたおかげで、かなり慣れたのか、ほとんどの子がスムーズにスキーを履くことができていました。
その後の雪山をつかった滑走練習でも、安全に配慮したサポートで、一人一人、自分のペースで滑走する姿がみられました。
【コラム1】雪原での一コマ~1年生の素朴な疑問
スキーの練習のお休み時間に質問コーナーが設定されました。子どもたちから素朴な疑問がどんどん出されました。
〇「スキーの金具の横の細いのはなんでついているの?」
(それは、スキーブレーキと言います。外れた時にスキーが下にすべっていかないようにする道具です。昔はそれがついてなくて、外れたスキーがどんどん滑ってしまって、人にぶつかって怪我をしてしまう事故がおきていました。)
〇「スキー靴はなんでこんなにかたいの?」
(足首を固定できるようにするためです。ブーツを固くすることでスキーに力を伝えることができます。また、昔のスキー靴はやわらかい動物の皮でつくっていましたが、動物がかわいそうなので、今はプラスチックでつくるようになりました。)
〇「どうやったらスキーがうまくなりますか?」
このように、難しい質問が出たときは”主観”で答えるしかありません。
(ご飯をしっかり食べて、練習をたくさんすることです。)
「なんだそんなことか」と、笑いがおきます。
【子どもの遊びとスキー用具の進化】
その昔、”スノトレ”や”スノーブーツ”といった多様な冬靴はなく、ほぼ長靴でした。
大雪のときは深雪の中をこいで歩いていました。
雪が入らないように「きゃはん」をつけている子もいました。
当時、お店にいくと「ミニスキー」という子どものお遊びグッズが売っていました。
長靴よりも少し大きめのサイズで、それをつけて学校の築山などで遊んでいました。
家の前にジャンプ台と称した雪山をつくり、ジャンプ選手になりきり、”跳躍しては転ぶ”遊びをしていました。
その遊びの延長で学校にいくときもミニスキーをつけて走って通っていました。
スケートのようにスケーティングをして走るのですが、かかとの後ろ部分が短いため、
少しでも後ろに体重がのるとバランスを崩して転んでしまいます。
また、材質がプラスチックなので、踏みつけると簡単に割れてしまいます。
エッジも丸み(サイドカーブ)もないので、ターンはできません。
ですから、ミニスキーの特性を生かすなら、何もせず「まっすぐ滑る」のが正しい乗り方です。
その冬の遊びが、ドイツで幼児むけの遊びプログラムの中にあることを知りました。
「ヒールフリースキー」と言って、ミニスキーと同じように、かかと部分がないスキーです。
スキーを三角にして足を広げる”プルーク”の形はとらずに、スキーを二の字の状態にして、後ろから押してあげて、まっすぐに斜面を滑走する体験をさせるのです。
こうしたプログラムが受け継がれていることから、
本来、スキーは”滑る楽しさを味わう”ことが大切だとされてきたのでしょう。
学校のグラウンドに造成された雪山は、まっすぐ滑っても下が平らになっています。
スキーの上にバランスをとって立っていれさえすれば、次第にスピードが落ちて安全に止まることができます。
つまり、初歩の段階では、ハの字ストップやプルークでブレーキをかけることよりも、
滑る体験をさせることで、
「スキーの滑る楽しさを味わう」
ことが大切なのです。
主にヨーロッパで行われているワールドカップスキーでは、優秀な選手を讃えて「キング・オブ・スキー」という称号があります。
その称号に値するのは、スピードをコントロールする回転系の選手ではなく、スピードを競う滑降(ダウンヒル)や大回転を得意とする選手とされているところから、スキーの発展を支えてきた国々の文化背景がみてとれます。
歴史をたどれば、日本にスキーを伝えたとされる”レルヒ少佐”の頃は、現代のようなストックではなく、”一本杖”を使っていたということが記されています。
つまり、スキーはストックに頼るのではなく、”スキーに乗る”体験こそが大切だということなのです。
ストックなしでスキー練習をしていた一年生は、
初めこそハの字ストップでおそるおそる構えていましたが、
滑り始めると、二本のスキーがスルスルっと寄っていき二の字になり、
平らなところまで、まっすぐに滑っていく子がたくさんいました。
途中、ふらふらしながらも、
手を広げたり、前に伸ばしたり、後ろに構えたりと、
様々なスタイルで滑るときのバランス感覚を試していました。
歴史的背景は知らずとも、理にかなった練習に果敢に挑戦していたこと、
そして、やってみた後に感じた「はてな?」を繰り出す前向きな思考と態度に驚きました。
極めつけの問い、
「スキー授業って、将来、何に役立つの?」
という難題には、なかなか答えるのが難しく、咄嗟に、
「それは、将来、自分でみつけましょう。」
と”宿題”にしました。子どもたちは、笑いながらズッコケてました。
【コラム2】2年生は上から直滑降
午後には、湿った雪が降りしきる中で2年生が直滑降に挑戦、どこまでいけるかを競う様子がみられました。
安全に止まれることがわかっているからこそ、スピードを出すことにチャレンジする様子から、1年生で練習してきた”経験値”を感じました。
今後の練習によって、益々の”進化”が楽しみです。
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